「PPAP問題」とは?
その深刻なリスクと安全にファイル転送を行う方法を解説

PPAP方式は、パスワード付きzipファイルをメールで送る方法として長年利用されてきました。しかし、その暗号強度や運用上の問題、利便性の欠如といった課題が指摘され、政府や企業を中心に廃止の動きが進んでいます。

本記事では、PPAP問題の仕組みやリスク、廃止の動きと代替策について解説し、安全にファイル転送を行う方法を紹介します。

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PPAPの仕組みと定義

まずはPPAP方式の基本的な仕組みや定義について整理し、その特徴を把握しましょう。

PPAPとは?

PPAPの仕組みと定義

PPAPとは、パスワードを設定したzipファイルをメールの添付ファイルとして送付し、そのパスワードを別のメールで送る手法を指します。この方法は一見、パスワードがかかっているため安全と考えられがちですが、実際には通信経路の盗聴や暗号強度の甘さが問題視されています。

さらに、送信者と受信者の双方に手間がかかるうえ、ファイル添付時のサイズ制限など実務上の課題も多く存在します。こうした経緯から、近年は政府や企業、さらには研究機関などでもPPAP方式を廃止する動きが進んでいるのが現状です。

P=Password 付きZIPファイルの送信
P=Password を別で送信
A=Angouka  「暗号化」のローマ字表記
P=Protocol  プロトコル:通信を用いた送受信の方法や手順のこと

PPAPが定着した理由

なぜPPAP方式がこれほどまでに普及し、長期間使われてきたのでしょうか。その背景にある理由を考えてみましょう。

インターネットがインフラとして発達していく中で、セキュリティ上の脅威が認識されるようになりました。インターネット上でのデータの盗み見の危険性に備えて、何らかの暗号化が必要であるという認識は広まって行き、メールの暗号化方式として、PGP(Pretty Good Privacy)やS/MIME(Secure / Multipurpose Internet Mail Extensions)といった方法が規格化されました。

しかし、メールの利用においては鍵の管理の煩雑さ、それに伴うコストが嫌がられ、メールの標準的な暗号化は普及しなかったという経緯があります。

そこで広まったのが「添付ファイルをパスワードによる共通鍵で暗号化する電子メール」です。パスワードを用いて暗号化を行えるZIP形式は主流となっていきました。さらに、ISMSやプライバシーマークといったセキュリティ認証取得の際に「重要な情報を含むメールは暗号化すること」が求められ、「パスワードによる暗号化」をセキュリティ対策として認められるようになりました。

多くの企業でメール環境が標準化されており、追加のシステム導入なしに運用できる手軽さも普及の一因と言えます。加えて“これまで問題が起きなかった”という慣習的な安心感から、深い検討が行われないまま長期間にわたり使われ続けてきました。しかし実際には、PPAPのセキュリティ面におけるリスクが徐々に明らかになるにつれて、従来の方法では不十分であるとの認識が高まっています。

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PPAPによるセキュリティ上の問題点

パスワード付きzipファイルを用いることで一見安全そうに見えるPPAPですが、実際にはどのようなリスクが潜んでいて、何が問題視されているのでしょうか。

暗号強度の脆弱さと盗聴リスク

暗号化されたzipファイルの強度は十分ではない場合も多く、盗聴や総当たり攻撃によって解読される恐れがあります。特にメール送信の過程で添付ファイルとパスワードの両方が流出すると、相手が容易に復号できる危険性が高まるでしょう。

実際にネットワーク盗聴の可能性を考慮すると、PPAP方式だけでは十分な安全性を担保できないことが指摘されています。こうした脆弱性が問題として認知されるようになり、PPAP問題が深刻視されるきっかけにもなりました。

マルウェア感染の可能性

パスワード付きzipファイルはウイルススキャンの工程を回避してしまう懸念があります。セキュリティソフトがメール添付を検査する際、パスワードで暗号化されていると中身のスキャンが行えず、マルウェアやウイルスが紛れ込んでも検知しにくいのです。

結果として、受信者が悪意のあるファイルを展開してしまい、企業内に大きな被害をもたらす恐れがあります。こうしたリスクを回避するためにも、ウイルスチェックが可能な仕組みへの移行が求められています。

パスワード無限試行の危険性

PPAPでは、ファイルパスワードを容易に推測できたり、別メールで送ったパスワードが漏洩したりすれば、複数回の試行によってファイルを解読されるリスクがあります。推測されやすい単純な文字列や流用パスワードを設定しているケースも多く、攻撃者にとっては攻撃が容易となる可能性が高いです。実際の業務現場ではパスワード管理が徹底されないことも多いため、こうした無限試行の脆弱性は見逃せない問題点の一つと言えるでしょう。

受信者側の負担と利便性の欠如

パスワード付きzipファイルを受け取った場合、受信側はパスワードの確認や入力といった作業を行わなければなりません。

また、複数のファイルをやりとりする際にはパスワード管理も煩雑になります。これらはセキュリティリスクだけでなく、日常的な業務フローを阻害する要因としても大きな負担となるでしょう。

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政府・企業が推進するPPAP廃止の動き

近年、政府機関や各企業によるPPAP廃止方針が打ち出され、具体的な移行と運用の見直しが進んでいます。

政府・企業が推進するPPAP廃止の動き

2020年には、日本政府が中央省庁でのPPAP利用を段階的に廃止する方針を示し、一部の大手企業でも同様の動きが加速しました。これは、前述のセキュリティリスクに加えて、業務効率を高めるという観点が大きな要因となっています。

一方で、長らく定着した運用スタイルを急に変えることには戸惑いもあり、組織的な周知や関係先との調整が必要です。こうした課題を乗り越えるために、研修や啓発活動、代替手段の導入サポートなどが各所で行われています。

PPAP廃止後に求められるセキュリティ対策とは

PPAPを廃止した後には、より安全で効率的なファイル送信の手段が求められます。どのような代替案が候補となるでしょうか。

PPAP方式の代替としては、メール以外の手段でパスワードを共有する運用や、外部の安全なファイル転送サービスを利用する方法など、幅広い選択肢があります。ポイントは、通信経路全体が暗号化される仕組みなどセキュリティ機能が組み込まれているかどうかです。

また、導入コストや管理の手間に配慮しつつ、ユーザーの利便性を損なわない形で導入することが重要でしょう。ここでは代表的な方法をいくつか取り上げ、その特徴を解説します。

ファイルとパスワードを別の通信経路で送付する

メールでファイルを送付し、パスワードは社内のチャットツールやSMSなど、別の経路で通知するやり方です。これにより、万が一メールが盗聴されたとしても、パスワード漏洩のリスクを分散できます。

ただし、この方式では複数の手段を使い分ける手間が発生し、依然としてパスワード自体を管理する必要も残ります。そのため、大容量ファイルへの対応や組織全体の運用ルール整備を行ったうえで採用することが望ましいでしょう。

クラウドストレージの活用

クラウドストレージにファイルをアップロードし、共有リンクを相手に送る方式は、PPAP問題を解消する有力な方法の一つです。共有リンクはアクセス権限を細かく指定できるため、一定期間のみダウンロードを許可するなどの運用もしやすいです。

加えて、ストレージ側でウイルススキャンを行うサービスも多く、セキュリティレベルを高められます。さらに、バージョン管理や複数メンバーでの共同編集機能など、単なるファイル送付以上の利便性を得られるのも注目ポイントです。

S/MIMEや秘密分散技術の導入

メールそのものを暗号化し、送信経路を保護するS/MIMEなどの技術を採用することで、安全なメール送受信を実現する方法もあります。秘密分散技術は、ファイルを複数の断片に分けて保管・送信する仕組みで、断片をすべて揃えなければ復元できないため、より強固なセキュリティが期待できます。

ただし、導入までに専門的な知識が必要であり、運用コストも高くなる可能性があります。したがって、高度なセキュリティを要する分野や機密度の高い情報を扱うケースなど、必要性に応じて検討することが大切です。

ファイル転送サービスの活用

企業が提供するSaaS等の専用のファイル転送サービスを導入するのも有効な策です。これらのサービスは通信経路の暗号化に加え、大容量ファイルの送受信やログ管理など、ビジネスに必要なセキュリティ機能を包括的にサポートしてくれます。

また、運用管理やサポートも手厚いため、導入後すぐに利用しやすい点が魅力です。コストはかかるものの、業務効率やセキュリティを高めるという投資効果を考慮すれば、検討する価値は十分にあるでしょう。

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【無料】【有料】ファイル転送サービスの違い

ファイル転送サービスには無料・有料のものがあります。それぞれの特徴と業務で利用する際の注意点を解説します。

ファイル転送サービスの違い

無料サービスでは手軽にファイルを送れる一方、サポートやセキュリティ機能に制限がある場合が多いです。有料の法人向けクラウドサービスであれば、企業ニーズに合わせて十分な容量や強固なセキュリティを備えられます。特に機密情報を扱う企業では、送信履歴に加えてIPや回数などの詳細なダウンロード履歴など、無料サービスではカバーしきれない機能が求められる場合もあります。導入時には、利用目的や運用フローを明確化し、必要な機能を満たすサービスを選びましょう。

無料のファイル転送サービスを業務で使用する時の注意点

無料サービスを利用する上での注意点は大きく分けて三つあります。

ひとつは、ファイルの宛先に対して不要な広告を見せる形になることです。無料のファイル転送サービスは主に広告を収入源としており、利用するサービスによってはビジネス上不適切な広告を見せてしまう可能性があります。

次に、無料サービスの多くはファイル容量や転送回数に上限が設けられており、ビジネスで大量のデータを頻繁に取り扱う際には、使い勝手が悪くなる可能性があります。

さらに、無料サービスの場合にはデータ管理の安全性において問題があったり、トラブル時のサポート対応が限定的であることも少なくありません。サーバーの脆弱性を攻撃されて不正アクセスが行われた結果、利用者の情報が外部に漏洩した事故も過去に報じられました。情報漏えいリスクを念頭に置かずに利用すると、思わぬ損害につながることがあるため、十分な注意が必要です。業務データはできる限りセキュアなサービスで取り扱うことが望ましいでしょう。

業務においては法人向けのファイル転送サービスが安心

セキュリティレベルの高い法人向けファイル転送サービスは、暗号化通信や送信履歴やダウンロード履歴の管理、ファイルの改ざん検知など多彩な機能を備えています。カスタマーサポートや導入サポートが充実しているため、トラブル時にも迅速に対応可能です。

また、定期的なアップデートや新機能の追加も行われるケースが多く、企業の成長や変化に合わせて継続的にシステムを最適化できます。費用面はかかりますが、安全性と利便性を考慮すると有力な選択肢と言えるでしょう。

専用サービス以外にグループウェアの選択肢も

グループウェアやコラボレーションツールにファイル転送の機能が搭載されている場合、その機能を活用することもおすすめします。グループウェアでは、スケジュールやワークフロー、チャット、社内設備なども一元管理できるため、複数のサービスを利用する必要がなくなり、日常業務の効率化にも期待ができます。

ただし、大容量ファイルを頻繁に扱う場合には、対象ツールの制限やセキュリティ要件をチェックする必要があります。利用条件をしっかりと把握し、自社のニーズに合った使い方を検討することが大切です。

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ビジネス環境での脱PPAPソリューション事例

実際に企業がどのようにPPAPを脱却し、新たなファイル転送ソリューションを導入しているのか、その事例を見てみましょう。

多くの企業では、クラウドストレージを中心としたファイル共有システムへ移行するケースが増えています。例えば、URLでファイルを共有し、リンクの有効期限やアクセス権限を設定してセキュリティを担保している事例があります。

ファイル送受信・共有サービスを利用し、社内外とのデータのやりとりを安全に行う企業も見られます。個人情報に関する情報の送受信、大きな容量のファイルを頻繁にやりとりする場合には、専用のシステムはより安全かつ管理負担もすくなくて済みます。他のシステムと連動させることで高度なカスタマイズ性を実現している例もあります。

これらの取り組みはいずれも、PPAP問題の抜本的な解決を図りながら、業務効率や利便性の向上にも寄与している点が重要です。

PPAP廃止に向けた取り組みにおける注意点

従来の運用から大幅に変更するため、組織内や取引先との調整が必要です。廃止にあたっての注意点を確認しておきましょう。

PPAP方式を廃止する際には、まず社内の情報共有ルールを明確化し、新たなファイル転送のプロセスを作り上げることが重要です。取引先がまだPPAP方式を使ったファイルのやり取りを行っている場合は、相手に代替手段を提示するなど、運用上の調整も不可欠となります。また、新しいシステムやサービスの導入時にはコストが発生するため、投資対効果や安全性の向上メリットをしっかりと検討する必要があります。いきなり禁止するのではなく、段階的なテスト運用や社員研修を通じて、スムーズな移行を目指すことが成功のカギとなるでしょう。

まとめ・総括

ここまで解説したPPAPの問題点と廃止の必要性、そして代替となる安全なファイル転送手段を振り返り、総括します。

PPAP問題は、暗号技術の脆弱性やメール通信の情報漏えいリスク、受信者側の負担といった複合的な要因によってセキュリティ上の大きな懸念を引き起こします。政府や企業が率先して廃止を進める背景には、より安全かつ利便性の高い手段を使うことで、情報漏えいリスクの低減や業務効率の向上を図ろうという目的があります。ファイルとパスワードを別経路で送る方法やクラウドストレージの活用、ファイル転送サービスの導入など、組織によって選択できるソリューションは多岐にわたります。新たな技術動向や運用効率を考慮し、最適なファイル転送方法を検討することで、企業のセキュリティと生産性を効果的に高めることが望まれます。

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執筆:株式会社ネオジャパン 編集部

株式会社ネオジャパン 編集部 執筆者:株式会社ネオジャパン 編集部

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