グループウェアとは、メール/スケジュール/掲示板/ワークフロー/コミュニケーションなど、企業内で情報共有を行うにあたり必要となる各種機能を備えたソフトウェアのこと。社内に散在するさまざまな業務情報・業務処理をグループウェア上で一元管理することで、業務で発生していた非効率を解消するだけでなく、現在さまざまな業種で取り組みが加速しているDX(Digital Transformation:デジタル改革)を推進するための基盤という、新たな役割も担うことが期待されている。製品によって機能の有無やコスト、使い勝手などが異なるため、企業のニーズに応じて最適なものを選ぶことが賢明とされる。
円滑なコミュニケーションや業務効率化、ナレッジの共有など、企業にさまざまな恩恵をもたらしてくれるグループウェア。しかし、得られる恩恵以上のコスト負担が掛かるともなれば、導入で得られる利点は打ち消されてしまう。選定の際は、ユーザー数や予算のバランスが非常に重要な選定ポイントとなる。ここでは、「desknet's NEO(デスクネッツ ネオ)」「サイボウズ ガルーン」「サイボウズ Office」主要国産グループウェア3製品を対象に、クラウド型とオンプレミス型それぞれのコスト比較を行ってみたい。
\ 各種機能の有無や用途ごとのおすすめまで! /
加えて、独自アプリケーションの基盤としての役割をもグループウェアが担うようになっているという背景より、現場業務の電子化(ノーコード・ローコードの活用)についても触れ、上記3製品にアプリ開発要素をプラスしたコスト比較も行っていく。なお、料金体系の一覧表には参考として「Microsoft 365」と「Google Workspace」も記載した。
製品名 | 提供形態 | 提供元 | 最新バージョン(提供時期) |
---|---|---|---|
desknet's NEO | オンプレミス/クラウド | ネオジャパン | 9.0(2025年3月) |
サイボウズ ガルーン | オンプレミス/クラウド | サイボウズ | 2025年5月11日メンテナンス |
サイボウズ Office | クラウド | サイボウズ | 2025年6月8日アップデート |
Microsoft 365(旧:Office 365) | クラウド | 日本マイクロソフト | 非公開 |
Google Workspace(旧:G Suite) | クラウド | グーグル | 非公開 |
2025年8月時点の情報に基づいて作成しています。現在の情報と差異がある可能性があります。
本稿における掲載価格は、各サービスの提供企業が公式発表しているデータを一覧化したものとなる。実際にグループウェアを導入する際、代理店などの中間業者が入ると価格にズレが生じることもあるため、あくまでも参考数値としてご覧いただきたい。
ここでは価格体系の一覧表に加えて、その価格適用時における「初年度・3年・5年」それぞれのコストをユーザー数ごとにグラフと表で比較した。なお、価格はすべて税抜き表記に統一している。
各製品の違いを細かく見ていく前に、ここで全体的な傾向について触れておきたい。まずオンプレミス型は、その多くがユーザー数に応じたディスカウント制度を採用している。一方でクラウド型は、ユーザー数に関係なく月額や年額が固定のサービスが多いため、どうしてもユーザー数が増えるほどコスト効率が低下する傾向にある。しかし逆に、ユーザー数が少なければ、こうした影響を受けないことから、中小規模の企業にとってはうれしい選択肢といえよう。
また今回の比較では、現場業務における電子化の需要を満たすうえで、実際にどれくらいのコストが必要になるかの目安として、主要な国産グループウェア3製品にアプリ開発要素をプラスしたコスト比較も実施している。なお、「サイボウズ Office」と「desknet's NEO」は、グループウェアのオプションとしてそれぞれ「カスタムアプリ」と「AppSuite」というアプリ開発機能を有しているが、オプションのない「サイボウズ ガルーン」に関しては参考として別サービス「kintone」の「スタンダードコース」との組み合わせを比較対象としている。
後半では例年500ユーザー・1,000ユーザーにおけるオンプレミス型のコスト比較を実施していたが、2021年9月に「サイボウズOffice」パッケージ版の新規販売が終了、また今年2025年7月には「サイボウズ ガルーン」パッケージ版のサポート終了が発表され、「2033年まで利用できれば良い」といった前提がない限り、オンプレミス型グループウェアの選択肢は「desknet's NEO」のみとなってしまった。
そこで今回は、それぞれのユーザー規模でdesknet's NEO(パッケージ版)を利用した場合のソフトウェアにかかるコストと、同規模で各製品のクラウド版を利用した場合のランニングコストの差(※)を調べてみた。
実際には、desknet's NEO(パッケージ版)を利用する場合、ここで算出された差額にサーバー機器の費用や運用に関わるコストが差し引かれるかたちとなるが、これらを踏まえたうえで、どちらにコストメリットがあるのかを判断いただきたい。
(※)desknet’s NEOパッケージ版とガルーンクラウド版の比較
国産グループウェア主要3製品+アプリ開発機能での比較
desknet's NEO | サイボウズ ガルーン | サイボウズ Office | Microsoft 365 | Google Workspace |
---|---|---|---|---|
・ライトプラン 600円/月 または 7,200円/年 ・スタンダードプラン (ライトプラン+AppSuite) 800円/月 または 9,600円/年 ・プレミアムプラン (スタンダードプラン+ChatLuck) 1,000円/月 または 12,000円/年 ・チャットプラスプラン (ライトプラン+ChatLuck) 760円/月 または 9,120円/年 |
・~1,000ユーザー 900円/月 または 10,800円/年 ・1,001~ユーザー 別途問い合わせ |
・スタンダードコース 600円/月 または 7,200円/年 ・プレミアムコース (スタンダードコース+カスタムアプリ) 1,000円/月 または 12,000円/年 |
◇一般法人向け ・Microsoft 365 Business Basic 1,079円/月 または 10,788円/年(899円/月相当) ・Microsoft 365 Business Standard 2,249円/月 または 22,488円/年(1,874円/月相当) ・Microsoft 365 Business Premium 3,958円/月 または 39,576円/年(3,298円/月相当) ◇大企業向け ・Microsoft 365 E3 (Teamsなし) 月払い不可、60,708円/年(5,059円/月相当) ・Microsoft 365 E5 (Teamsなし) 月払い不可、98,496円/年(8,208円/月相当) |
・Starter 950円/月 または 9,600円/年(800円/月相当) ・Standard 1,900円/月 または 19,200円/年(1,600円/月相当) ・Plus 3,000円/月 または 30,000円/年(2,500円/月相当) ・Enterprise Plus 4,760円/月 または 47,760円/年(3,980円/月相当) |
5ユーザー 比較表
100ユーザー 比較表
500ユーザー 比較表
今回比較した国内産のクラウド型グループウェアは、価格改定によりいずれも完全定額制となったため、ユーザー数の増加によるディスカウント効果はない。アプリ開発機能を含めた場合の比較では、「AppSuite」を含む「desknet's NEO」のスタンダードプランがもっとも低コストとなった。「サイボウズ ガルーン」と「kintone」のスタンダードコースの組み合わせは、ほかの2製品と比べて価格の開きが大きく、特に「desknet's NEO」との比較では3倍以上もの差がついている。
国産グループウェア主要3製品の比較(アプリ開発機能を含めない場合)
5ユーザー 比較表
100ユーザー 比較表
500ユーザー 比較表
比較表
※サイボウズ ガルーンの5ユーザー料金については、最低契約ユーザー数である10ユーザーにて算出
ユーザ数 | desknet's NEO (ライトプラン) |
サイボウズ Office (スタンダードコース) | サイボウズ ガルーン |
---|---|---|---|
5ユーザー | ¥36,000 | ¥36,400 | ¥108,000 |
100ユーザー | ¥720,000 | ¥720,000 | ¥1,080,000 |
500ユーザー | ¥3,600,000 | ¥3,600,000 | ¥5,400,000 |
ユーザ数 | desknet's NEO (ライトプラン) |
サイボウズ Office (スタンダードコース) | サイボウズ ガルーン |
---|---|---|---|
5ユーザー | ¥108,000 | ¥108,000 | ¥324,000 |
100ユーザー | ¥2,160,000 | ¥2,160,000 | ¥3,240,000 |
500ユーザー | ¥10,800,000 | ¥10,800,000 | ¥16,200,000 |
ユーザ数 | desknet's NEO (ライトプラン) |
サイボウズ Office (スタンダードコース) | サイボウズ ガルーン |
---|---|---|---|
5ユーザー | ¥180,000 | ¥180,000 | ¥540,000 |
100ユーザー | ¥3,600,000 | ¥3,600,000 | ¥5,400,000 |
500ユーザー | ¥18,000,000 | ¥18,000,000 | ¥27,000,000 |
アプリ開発機能を含めない場合の比較では、「サイボウズ Office」のスタンダードコースと「desknet's NEO」のライトプランが同額で、こちらも「サイボウズ ガルーン」との差が顕著に表れている。
desknet's NEO (パッケージ版) | サイボウズ ガルーン (クラウド版) |
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・基本ライセンス ユーザー数:基本ライセンス/年間サポート(2年目以降/年) 5ユーザー:75,000円/18,000円 10ユーザー:100,000円/18,000円 20ユーザー:150,000円/18,000円 30ユーザー:200,000円/45,000円 50ユーザー:250,000円/45,000円 100ユーザー:500,000円/90,000円 200ユーザー:1,000,000円/140,000円 300ユーザー:1,500,000円/180,000円 400ユーザー:2,000,000円/270,000円 500ユーザー:2,500,000円/360,000円 600ユーザー:3,000,000円/450,000円 700ユーザー:3,500,000円/540,000円 800ユーザー:4,000,000円/630,000円 900ユーザー:4,500,000円/720,000円 1,000ユーザー:4,760,000円/760,000円 1,500ユーザー:5,310,000円/810,000円 2,000ユーザー:5,900,000円/900,000円 3,000ユーザー:7,080,000円/1,080,000円 5,000ユーザー:8,850,000円/1,350,000円 7,000ユーザー:10,620,000円/1,620,000円 10,000ユーザー:12,390,000円/1,890,000円 無制限ユーザー:15,340,000円/2,340,000円 ※基本ライセンスには、初年度の年間サポートが含まれる。 |
・~1,000ユーザー 900円/月 または 10,800円/年 ・1,001~ユーザー 別途問い合わせ |
AppSuite | kintone |
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・基本ライセンス ユーザー数:基本ライセンス/年間サポート(2年目以降/年) 5ユーザー:60,000円/14,400円 10ユーザー:80,000円/14,400円 20ユーザー:120,000円/14,400円 30ユーザー:160,000円/36,000円 50ユーザー:200,000円/36,000円 100ユーザー:400,000円/72,000円 200ユーザー:800,000円/108,000円 300ユーザー:1,200,000円/144,000円 400ユーザー:1,600,000円/216,000円 500ユーザー:2,000,000円/288,000円 600ユーザー:2,400,000円/360,000円 700ユーザー:2,800,000円/432,000円 800ユーザー:3,200,000円/504,000円 900ユーザー:3,600,000円/576,000円 1,000ユーザー:3,808,000円/608,000円 1,500ユーザー:4,248,000円/648,000円 2,000ユーザー:4,720,000円/720,000円 3,000ユーザー:5,664,000円/864,000円 5,000ユーザー:7,080,000円/1,080,000円 7,000ユーザー:8,496,000円/1,296,000円 10,000ユーザー:9,912,000円/1,512,000円 無制限ユーザー:12,272,000円/1,872,000円 ※基本ライセンスには、初年度の年間サポートが含まれる。 |
・ライトコース 1,000円/月 または 12,000円/年 ・スタンダードコース 1,800円/月 または 21,600円/年 ・ワイドコース 3,000円/月 または 36,000円/年 ※いずれもコースも最小契約は10ユーザー~ |
国産グループウェア主要2製品の比較
500ユーザー 比較表
1,000ユーザー 比較表
国産グループウェア主要2製品+アプリ開発機能での比較
500ユーザー 比較表
1,000ユーザー 比較表
当然の結果ではあるが、「desknet's NEO(パッケージ版)」と「サイボウズ ガルーン(クラウド版)」では初年度からかなり大きな差が見られた。実際には「desknet's NEO(パッケージ版)」の利用に必要となるサーバー機器の費用や運用に関わる各種コストが加わる形となるため単純な比較はできないが、3年~5年といった長期利用を見据えた際のコスト差は参考になるだろう。
アプリ開発機能との組み合わせについては、前述の通りオプションとして用意されているのは「サイボウズ Office」と「desknet's NEO」の2製品だが、オンプレミス型として提供されているのは「desknet's NEO」のみ。加えて、オンプレミス型「AppSuite」の場合は「desknet's NEO」のユーザー数とは別に5ユーザー以上から契約/購入できるため、限られた部署でのみアプリ開発機能を使いたいような場合にも効果的といえる。
また、参考として比較した「サイボウズ ガルーン + kintone(スタンダードコース)」の組み合わせは、クラウド型限定でのみ提供されており、オンプレミス型での導入ができない点は抑えておきたい。ユーザー情報などの連携に関しても、クラウド版の「サイボウズ ガルーン」と組み合わせた場合にのみ対応する。
今回行ったコスト比較では、「desknet's NEO」の優位性が際立つ結果となった。もちろん、グループウェアを選ぶ際には価格だけでなく、機能の有無や利便性など、ほかにも選定の際に重視する点は多くある。なかでも現場での使い勝手はとくに留意すべき項目で、いくら高機能でも使われなければ、コストの面からも宝の持ち腐れとなりかねない。
なお、機能編でも言及した通り各サービスともクラウド型が主体となっているが、ランニングコストやセキュリティなどの関係から、オンプレミス型を検討するケースもあるだろう。サイボウズ社によるパッケージ版販売・サポート終了の発表を受けてか、ネオジャパン社はdesknet's NEO(パッケージ版)のサポートを終了“しない”ことを発表した。これにより、オンプレミスでのグループウェア導入が前提となるケースにおいては、desknet's NEOが実質一択となったといって良い。
また、同一ツール内におけるアプリ開発機能の利用や、部分的なクラウド活用、たとえばMicrosoft 365の機能も一部利用したいといった要件に対応できるのも「desknet's NEO」のみとなる。
最後に、製品選定時にクラウド型とオンプレミス型のどちらを選択すべきかは、コストの側面からも重要なポイントだ。たとえば、小規模な事業所、部署単位での導入であれば、少ないユーザー数からでも柔軟に導入できるクラウド、逆に大規模な企業での全社的な導入といった場合にはオンプレミスといった具合に、自社のニーズと導入規模、用途に合った機能とコストのバランスを考える――これこそ、グループウェアを選定するうえで最も重要なポイントといえるだろう。