ヒューマンエラーとは？
発生の原因とその対策をわかりやすく解説

企業や組織で起こるミスや事故にはさまざまな原因があります。そのひとつがヒューマンエラーです。人間が起こすミスの規模によっては、企業全体の利益や社会的信用を失う事態になる可能性もあります。そのため、ヒューマンエラーについて学び、適切な業務環境を構築することで課題解決することが大切です。本記事では、ヒューマンエラーとは何か、その種類や具体例、主な原因を交えながら、ヒューマンエラーの対策について解説します。

ヒューマンエラーとは？

ヒューマンエラーとは、人間の判断や思い違い、行動の誤りによって生じるミスや事故のことです。人的ミスとも呼ばれ、主に不注意や知識不足、誤解などが原因で発生します。 さまざまな業種で問題となり得るヒューマンエラーは、品質や業務効率の低下、安全性のリスクを上げるなど、企業に大きな損失をもたらします。そのため、企業組織ではヒューマンエラーの原因を正しく理解して、適切な対策を講じる必要があります。

ヒューマンエラーの種類

ヒューマンエラーには、大きく2つの種類に分類できます。

意図して起こるヒューマンエラー

意図して起こるヒューマンエラーとは、故意によるエラーです。手順や規則をわざと無視する、意図的に手抜きをするなどによって起こります。例えば、仕事を早く終わらせようとして、独自の判断で手順を省略したり、個人の判断でルールを破ったりするなど、原因はさまざまです。

意図せず起こるヒューマンエラー

意図せず起こるヒューマンエラーとは、うっかりミスや注意不足などで起こしてしまうエラーのことです。「故意」ではなく「過失」によるヒューマンエラーといえます。このエラーは知識や経験の不足、不注意や疲労、誤解、ストレスに起因するものなど、原因はさまざまです。業務手順の見落としや機械の誤操作、指示の聞き逃しや見間違え、作業の失敗が典型的な例として挙げられます。

ヒューマンエラーの具体例

• 注文内容の確認においてチェック手順を無視した結果、オーダーミスが発生した。
• メール送信前の宛先チェックにおいて、ルール化されていたダブルチェックを省略して誤送信した。
• 時間がないので、意図的に作業手順をカットしたため、不良品が発生した。

いずれも、本来やるべきことを怠ったことで発生したエラーです。

一方、意図せず起こる、過失によるヒューマンエラーには以下のようなケースがあります。

• 電話による注文の聞き違えで、別の商品を提供してしまった。
• 疲労による注意力の低下で、作業手順を1ページ分飛ばしてしまい、品質が低下してしまった。
• 機械の操作を誤ってしまい、大怪我をしてしまった。

これらのエラーは、思わぬ過ちです。

また、複数のヒューマンエラーが連鎖的に起こることで、大事故に発展してしまうケースもあります。

例えば、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故や、2000年のコンコルド墜落事故なども、ヒューマンエラーの連鎖が招いた悲惨な事故です。

ヒューマンエラーがいかに重大な事故を招くか認識し、徹底した対策を講じることが重要になります。

ヒューマンエラーの主な原因

ヒューマンエラーには、心理的なものや業務環境などさまざまな原因があります。ここでは、ヒューマンエラーが起こる主な原因について見ていきましょう。

思い込み

思い込みは、過去の経験や先入観による誤った判断から発生します。例えば、日常でルーティン化された作業にて「この作業はいつも行っている作業だから大丈夫だろう」という固定観念が細部への配慮や確認ミスに繋がり、思い込みを招きます。普段と変わらない作業でも、無意識に手順を飛ばしてしまう原因にもなりますし、手順や情報が変更されていても気づきにくく、ヒューマンエラーを誘発してしまうのです。

不注意

不注意は、集中力の低下や注意力の欠如が招くミスの一因です。特に、長時間の業務や単調な作業の繰り返しは集中力を削ぎます。また、作業環境における周囲の騒音や、視覚的な妨げも不注意を招く原因です。不注意は、適度な休憩や職場環境の整備を怠ることで発生してしまうケースが多いです。

知識・経験不足

知識や経験不足は、業務に必要な的確な判断や対応ができないため、ヒューマンエラーの原因になります。部署異動してきた従業員や新入社員は、専門知識や業務手順を十分に把握できていないことも多いでしょう。そのため、誤った手順で作業を進めればミスの発生も増え、ヒューマンエラーを起こしてしまいます。

慣れによる気の緩み

業務への慣れによる気の緩みもまたミスを起こしやすくなります。同じ業務を数年続けていると、基本的な手順や確認作業を省略しがちです。個人の感覚で「このくらいは大丈夫だろう」という気の緩みが出てきてしまいます。ベテランの従業員になるほど慣れと気の緩みが現れる可能性が高くなるため、注意しなければなりません。

連絡ミス

情報の伝達不備や誤解などの連絡ミスは、ヒューマンエラーに繋がります。口頭での曖昧な指示や、報告の不備は、正確な業務遂行を阻む原因です。例えば、異なる部門間での不十分な連携により、重要な情報が伝わらない、あるいは誤った情報が伝わってしまうケースがあります。連絡ミスは、円滑な業務の妨げとミスに繋がる大きな原因のひとつです。

コミュニケーションミス

コミュニケーションミスは、チーム内や部門間、同僚や上司などとの情報共有不足が原因です。報告・連絡・相談などのコミュニケーションが円滑に行われていない組織では、重要な情報がうまく伝達・共有されず、業務の重複や作業の抜け漏れが発生してしまいます。

疲労やストレス

長時間労働や厳しすぎる規律、不適切な労働環境は、疲労やストレスを蓄積させます。過度な疲労やストレスは集中力や判断力の低下を招き、ヒューマンエラーの発生を高めてしまうのです。また、短納期や困難な問題解決に迫られた場合も、疲労やストレスを感じやすくなり、正常な判断ができなくなることもあるでしょう。

職場環境

劣悪な職場環境は、作業効率を著しく低下させ、ヒューマンエラーを引き起こす原因になります。例えば、現場の温度管理に不備があり、暑すぎるあるいは寒すぎるなどの室温が集中力を下げます。また、暗すぎる照明や常に聞こえる騒音も、ミスを誘発する原因です。狭い作業スペースは、物理的なミスを起こしやすくなります。このような職場環境は、ヒューマンエラーを発生させる可能性が高いです。

手順の省略

作業時間短縮などのメリットのために手順を省略することは、重大な事故やミスを引き起こす原因になります。確認や検証、検品などの必要な手続きを飛ばすことで、気づくべき小さなミスが見過ごされ、後に大きな事故に発展する場合があるのです。生産性を高める意識は必要ですが、手順やルールを省略することは、コンプライアンス違反などの重大な問題に繋がることがあります。

不安定な心理状態

不安定な心理状態での業務遂行は、ヒューマンエラーを起こしやすくなります。職場での人間関係や個人的な問題で心理状態が不安定になると、注意力の欠如や判断力の低下、無気力感などが影響し、ミスを犯しやすくなるのです。

ヒューマンエラー防止 9つの対策

ヒューマンエラーの原因が把握・分析できれば、それらを事前に防ぐことができます。ここでは、ヒューマンエラーを防止する9つの対策を見ていきましょう。

1.業務プロセスを見直す

複雑な業務手順は、作業のミスや混乱を招きます。非効率な業務フローは、従業員が自分のやり方で効率化を求めてしまう要因です。ヒューマンエラーの防止策としては、まず現行の業務プロセスを再度見直すことから始めると良いでしょう。業務フローはシンプルでわかりやすく設計しなければなりません。無駄や重複のある工程を整理すること、そして従業員からの要望やフィードバックを積極的に取り入れて、現場の作業工程に適した業務フロー改善を行うことが重要です。

2.危険予知活動を行う

危険予知行動とは、事前に潜在的なリスクを洗い出して、それぞれに適切な対策を講じる行動です。潜在的なリスクは、従業員からのヒアリングなどを通して、定期的にピックアップします。その上で、「〇〇のようなリスクが伴う可能性」を従業員に認知してもらい、日々の業務の中でリスクを意識してもらわなければなりません。これらの行動は従業員の安全意識や問題解決能力の向上に繋がり、ヒューマンエラー防止に効果的です。

3.コミュニケーションを活性化する

ヒューマンエラーの防止には、コミュニケーションが欠かせません。従業員同士や上司とのコミュニケーション、また部門間での情報共有は、情報伝達不足や誤解を低減します。組織内での密な報告・連絡・相談を活発に行うことは、意見や疑問を話し合えるオープンな職場環境を実現するためにも重要です。

4.業務、タスクの見える化

業務やタスクの見える化は、従業員一人ひとりの作業や負担を管理することに役立ちます。例えば、過度な負担を抱えている従業員がいる場合は、作業負荷を分散させるなどの対処が必要です。この時、全体のバランスを見ながら特定の従業員に集中しないように差配することが大切です。また、誰がどのようなタスクを行っているのかが視覚的にわかれば、作業の重複や抜け漏れを防ぐことにも繋がります。業務やタスクの見える化は、ITツールを活用すると良いでしょう。

5.安全最優先の意識付け

ヒューマンエラーは、従業員の怪我や事故に発展するケースもあります。そのため、何よりも安全を優先するという意識を組織全体で共有することが大切です。まずは、安全に作業をするための心構えや手順を明確に定めて、定期的な教育・訓練を実施しましょう。このような施策を経営陣が積極的に行い、「安全を最優先にしなければならない」という意識付けをしていくことが、ヒューマンエラーの防止に繋がります。

6.ヒューマンエラー防止に向けた研修や教育

ヒューマンエラーを防止するために必要なのは、普段からの心構えです。スキルや知識に加え、「ヒューマンエラーがどのような時に起こるのか」を常に意識することで過失によるミスを防ぐことができます。そのために効果的なのが、ヒューマンエラー防止をテーマにした研修や教育です。具体例を元にしたシミュレーションやトレーニングを定期的に行い、ヒューマンエラーの原因と対策を学ぶ場を作りましょう。

7.マニュアルを作成する

マニュアルを作成し、業務手順の統一や注意点、よくあるミスを共有することで、ヒューマンエラー防止に繋がります。マニュアルは、初めて作業を行う従業員でもわかりやすいように作成するのがポイントです。また、定期的に見直し、最新の情報に更新し続けることが重要になります。

8.職場の環境改善

職場環境は、従業員の注意力や生産性に大きく影響します。快適な作業場所や室温、作業に適した音や光といった環境構築がヒューマンエラー防止に繋がるのです。職場環境は、可能な限り身体的・精神的な負担を軽減するように保つ必要があります。現場で作業をする従業員の意見をヒアリングして、働きやすい職場環境へ改善していきましょう。

9.ツールの導入

手作業などでミスが起こりやすい業務については、ツールを導入してヒューマンエラーを防止する方法が有効です。例えば、パソコンへのデータ入力業務に自動化ツールを導入すれば、入力ミスを低減できます。エラーチェック機能を持つシステムならば入力ミスに気づくことができるため、作業効率化に役立つでしょう。全体の業務で定型化できる作業をツールで自動化することで、ヒューマンエラーを大幅に削減することが可能です。また、製造業などの業種によっては、AI技術による異常検知予測なども導入されているなど、さまざまなIT技術がヒューマンエラー防止に活用されています。

ITツールで行うヒューマンエラー防止

ヒューマンエラーの発生が多い業務には、ITツールの活用がおすすめです。例えば、パソコン操作や入力作業の中で定型的な作業を自動化すれば、ヒューマンエラーを大幅に削減することができます。

自動化ツールとして代表的なものに「RPA」があります。RPA（Robotic Process Automation）とは、パソコン上での作業を、ロボットにより自動化するツールの総称です。人間の判断が必要な作業や、毎回手順が変わる業務などには向いていませんが、ルーティン化できる業務にRPAを導入すればミスが無くなります。ヒューマンエラーを予防できることはもちろん、大幅な作業効率の向上が可能です。

また、ヒューマンエラー防止のための業務プロセス改善やコミュニケーションの活性化などに、グループウェアを活用すると良いでしょう。自社に適した業務プロセスをグループウェアで管理することで、情報共有や、業務やタスクの見える化などが可能です。

さらに、RPAとグループウェアを組み合わせて活用することもできます。例えば、グループウェアのスケジュール機能からデータを抽出して集計する作業や、ワークフロー機能から申請書の情報を抽出して転記する作業を自動化すれば、これら工程でヒューマンエラーが起こらなくなります。

このように、ヒューマンエラー防止はITツールを上手に活用することで実現可能です。ITツールについてはさまざまな製品が提供されています。自社の業務プロセスの中で、RPAやグループウェアが導入できる部分を洗い出し、適したITツールを選定しましょう。

まとめ

人間の行動や作業には、必ずミスや誤解が生まれます。業務環境や心理面の影響がヒューマンエラーを起こしてしまうのです。しかし、その原因を理解して対策することで、ヒューマンエラーを最小限に抑えることができます。本記事で紹介した、ヒューマンエラーの種類や具体例、業務プロセスやコミュニケーションの重要性を理解した上で、企業全体での研修や教育を行い、従業員一人ひとりがヒューマンエラー防止を意識できる体制を構築しましょう。また、定型的な業務には、ITツールの導入検討してみてはいかがでしょうか。

更新日：2024年11月19日
執筆：株式会社ネオジャパン 編集部

執筆者：株式会社ネオジャパン 編集部

desknet's NEOのお役立ちコラムは、1999年の市場参入から25年以上のグループウェア開発・提供実績を持つネオジャパンが、業務改善に役立つビジネス用語の基礎知識、ツールの選び方などの情報をお届けします。グループウェア、そしてノーコードツールの開発・販売の知見をもとに、社内コミュニケーション改善、社内情報の共有といった課題解決に役立つ情報発信をいたします。