マトリクス組織とは何か?
メリットや運用のポイントをわかりやすく紹介

マトリクス組織は複雑化するビジネス環境に対応するための有効な方法として昨今、注目を集めている革新的な組織形態のことです。従来の機能別や製品別の組織形態ではカバーしきれなかった部分を補えるほか、経営層の負担が軽減するといったメリットが期待できます。

本記事では、マトリクス組織の定義や基本構造、種類をはじめ、メリットやデメリットなどについても詳しく解説します。

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マトリクス組織とは

マトリクス組織は、前述した通り、複雑化するビジネス環境に対応するための有効な方法として、昨今注目を集めている革新的な組織形態のことを表します。

マトリクス組織とは

現代ビジネスが複雑・煩雑化するなかで、機能別や製品別など一つの観点だけでは対応が困難になってきたことを背景に、マトリクス組織が注目を集めるようになってきました。この組織形態では、2つの異なる組織形態が交わることで、柔軟な業務運営とさまざまな目的の同時達成が期待できます。

マトリクス組織の定義と基本構造

マトリクス組織とは「職能別」「事業」「エリア」「職種」など、業務を遂行する上で必要な要素を縦と横に組み合わせ、編み目のように複数の軸で構成されている組織形態のことです。複数の事業を展開したり、複数店舗で運営したりする際、1人の従業員が単体ではなく複数の事業部門を兼任することで事業を進めていきます。1人の社員に対して上司が2人以上存在するような状況となり、組織力の向上や業務効率化が見込めるでしょう。

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マトリクス組織の種類

マトリクス組織は以下の3つの種類に細分化されます。それぞれの特徴について、解説します。

ウィーク型

ウィーク型のマトリクス組織では、プロジェクトの責任者となる人材を置かないといった特徴があります。通常の組織ではマネージャーなどの責任者がスタッフに指示を出して、組織を回していきますが、ウィーク型の場合にはそれぞれが自分の裁量で行動できます。チームメンバーの自由度が高く、フットワークが軽い一方で、指揮命令系統や組織の関係が曖昧になりやすい点に注意が必要です。

バランス型

バランス型のマトリクス組織ではプロジェクトチームのメンバーの中から、責任者を1人選出します。責任者を置かないウィーク型とは、この点で大きく異なるといえるでしょう。責任者を置くことで、チーム全体が可視化されるとともに、メンバーはプロジェクトの動きを考慮した上で行動を起こすことができるようになります。ただし、業務遂行メンバーの中から責任者を選出することになるため、責任者の負担が増える点に注意が必要です。

ストロング型

ストロング型のマトリクス組織では、プロジェクトチームごとに特定のプロジェクトマネージャーを選出し、配置します。プロジェクトマネージャーはプロジェクトのマネジメントを担当する部署に在籍しているため、マネジメントに特化した高いスキルを有しているのが特徴です。専門的なプロジェクトマネージャーを配置することで、メンバーの負荷を低減できるほか、指揮命令系統が明確になるなどのメリットが期待できます。しかし一方で、マネージャー層の教育などにかかる時間やコストが増える可能性があり、導入にあたっては慎重に検討することが大切です。

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マトリクス組織とその他の組織形態の違い

マトリクス組織とその他の組織形態の違い

マトリクス組織は「プロジェクト型組織」と「機能型組織」の2つのメリットを有しているといわれます。ここではマトリクス組織と、その他の組織形態の違いについてみていきましょう。

プロジェクト型組織との違い

プロジェクト型組織とは、プロジェクトごとにプロジェクトチームを作る組織構造のことです。たとえば、ある商品を製作し、販売するために営業職や企画職、専門性の高い技術職を集めたチームを結成するのがプロジェクト型組織といえます。組織内で高度な意思決定ができるほか、環境の変化やトラブルが発生したとしても柔軟な対応が可能です。また、対外的な面でいえば、メンバーの役割と責任の所在が明確になるため、クライアントに安心感を与えることができるでしょう。

一方で、プロジェクト型組織はプロジェクトが完了した時点で、組織は解散するのが一般的です。そのため、プロジェクト型組織では中長期的にノウハウやナレッジを蓄積させていくことが難しいのがデメリットといえます。

機能型組織との違い

組織型組織とは、人事や営業、マーケティングや企画など「機能」ごとに部門を配置していく組織構造のことです。部署ごとに独立させて業務を遂行するため、部門内での情報共有がスムーズになるほか、情報の連携漏れ等によって問題が生じることも防止できるでしょう。機能型組織は中小企業や地域密着型の企業に多く見られ、日本企業ではよく見られる組織形態となっています。

機能型組織の注意点として、各部門の上司から業務指示がなされるため、行動の大半が上司の判断待ちになりやすい点があげられます。また、部門ごとに独立してしまうため、部門外との連携や情報共有が難しくなる点にも気をつける必要があるでしょう。

マトリクス組織のメリットとデメリット

マトリクス組織を導入した際のメリットとデメリットをそれぞれ紹介していきます。

マトリクス組織のメリット

マトリクス組織を導入することで得られるメリットは、主に4つあります。

業務効率の向上が期待できる
マトリクス組織は部署同士でコミュニケーションをとりながら業務を進めるため、プロジェクト全体が把握しやすくなり、業務効率化が期待できます。また、他分野の知識にも触れられるため、各メンバーの知識も高まるでしょう。

新規事業が立ち上げやすくなる
新規事業を展開する際、適切な人員でチーム編成を行うことが求められます。マトリクス組織を導入していれば、基本的に新たなメンバーの採用が必要ないため、新規事業の取り組む体制が整えやすいといえるでしょう。

組織力向上に繋がる
マトリクス組織の導入によって、メンバーは複数の事業部門にまたがってプロジェクトに関与することになります。従来の所属部門だけでは得られなかった新たな知見や情報を手に入れられるほか、結果として事業全体に対する理解も深まるでしょう。また、自身の経験を活かした改善提案もしやすくなるため、組織全体のパフォーマンス向上にも繋がります。

経営層の負担が軽減する
マトリクス組織を導入している企業では、ある程度の決定権を組織の責任者やプロジェクトマネージャーに任せているケースがほとんどです。このアプローチによって、2つのメリットが期待できます。
1つ目は経営層の負担軽減です。経営トップは重要な意思決定ができるようになり、マネジメント業務によりコミットできるようになるでしょう。2つ目に現場とのコミュニケーションが円滑になることがあげられます。現場に近い立場のマネージャーが一定の裁量権を持つため、現場メンバーとマネジメント層の意思疎通が図りやすく、やりとりに関するストレスも軽減されるでしょう。

マトリクス組織のデメリット

マトリクス組織の導入において、いくつかのデメリットが生じることがあります。

従業員の負担が大きくなる
マトリクス組織では、1人の従業員が複数の業務を担うため、従業員の負担が大きくなってしまう傾向があります。また、複数の責任者の下で働くため気を遣うシーンも多くなるほか、マネージャー同士の連携が十分でない場合に従業員が業務の調整を行う必要が出てくるでしょう。そのため、従業員に負担がかからないように適切なケアを施すことが求められます。

指揮命令系統の統一が難しい
マトリクス組織では、責任者が複数存在するため、指揮命令等を行う際に統一が難しいことが難点です。責任者によって意見や支持が異なってしまうと、現場に混乱を招く可能性があります。さらに、責任者同士で対立してしまった場合、業務が停滞してしまうケースも少なくありません。よって、責任者を選ぶ際は、「自部門ではなく組織全体の利益を優先できる人材」など一定の判断基準を設定することが大切です。

人事評価が複雑化する
マトリクス組織の導入によって、組織ごとに目標が異なるため、誰がどういった業務に携わっているのかが把握しづらくなります。結果として、現状の人事制度では対応しきれない部分が出てくるほか、場合によっては人事評価制度の見直しを迫られることもあるでしょう。また、組織数が多ければ多いほど、人事評価が複雑化しやすくなるため注意が必要です。

マトリクス組織の成功事例

マトリクス組織の成功事例

マトリクス組織は、海外展開をしている企業に多く見受けられます。ここでは国内外でのマトリクス組織の成功事例として、以下の2例を取り上げてみました。

専門領域の交わりで研究開発が加速

花王株式会社は、ビジネスユニットと機能ユニットにおいてマトリクス組織を導入しています。ビジネス部門が持っている情報を元に研究開発部門が研究を行うことで、両者の知見をうまく融合し、よりよい商品を生み出しています。部門を超えて連携することで、消費者や市場のニーズをキャッチしやすくなるでしょう。とはいえ、花王ほど大きな組織でマトリクス組織を実践することは容易なことではありません。そこには多大なコストがかかったのは事実ではあるものの、コストの倍以上の効果に繋がっています。

知識・経験とサービス提供の2つの軸で迅速な課題解決

外資系総合コンサルとして知られる、デロイトトーマツコンサルティング合同会社は「Industries(インダストリーサービス)」と「Offerings(オファリングサービス)」からなる組織形態をとっています。インダストリーサービスは業界に関する知識を持つ軸として構成され、対するオファリングサービスでは顧客となる企業が抱える経営課題にフォーカスできる軸です。マトリクス型の組織体制とすることで、さまざまな課題に臨機応変に、かつ迅速に対応するための総合力や統合力を堅固なものとしています。

マトリクス組織の構築と運用のポイント

マトリクス組織の構築と運用を行う際は、それぞれ以下のポイントを取り入れることが必要です。それぞれ見ていきましょう。

構築のポイント

マトリクス組織では、社員が複数の組織に所属するため、責任者が1人ではなくなります。責任者によって指示が異なってしまうこともあり、現場の進行が遅れるなどの混乱を招くケースも少なくありません。そのため、指揮命令を行う責任者を明確にするなど、マトリクス組織の導入時にルールを定めておくことが大切です。

運用のポイント

所属するチームの業務内容によっては、個々の仕事量の負担が多くなる可能性があります。そのため、責任者が定期的にヒアリングを行い、仕事量を調整することが必要です。また、マトリクス組織をうまく運用するためには、部署の責任者同士のコミュニケーションが欠かせません。信頼関係を築いていれば、意見の違いがあった際に、お互いの意見を尊重し合うことができるでしょう。

現代のマトリクス組織とテクノロジーの進化

グローバル化やデジタル化の進歩に伴い、マトリクス組織の重要性が高まっています。市場のニーズは日々複雑化しており、それらに対応するためには縦と横に組み合わさった組織形態が効果的です。マトリクス組織を導入することで、コミュニケーションの効率化や意思決定プロセスのスピードアップ、リソース管理の最適化などさまざまな面で期待できるでしょう。また、AIやビックデータ解析などのテクノロジーを駆使することで、プロジェクトの進捗管理や意思決定がサポートでき、マトリクス組織の効果的な運用が可能となります。

まとめ

今回の記事では、マトリクス組織の種類をはじめ、構築や運用のポイントについてお伝えしました。マトリクス組織を導入することで、業務効率化や新規事業に取り組みやすくなるといったメリットが得られる一方、従業員の負担の増加や指揮命令系統の統一の難しさなど、デメリットにも留意が必要です。

マトリクス組織を効果的に機能させるには、責任者の明確化、仕事量調整、責任者間の緊密なコミュニケーションを心掛けることが欠かせません。マトリクス組織の重要性は年々高まっており、AIなどの新しいテクノロジーを活用することで、より効率的な運用が可能になると考えられます。

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