働き方改革とは?
実現に向けた課題と取り組みのポイント
「働き方改革」は労働環境の改善に向けた施策で、2016年より内閣官房に「働き方改革実現推進室」が設置され、議論されています。この働き方改革が施行されたらどのような影響があるのか、経営者や労務担当者でなくとも気になるのではないでしょうか。
ここでは、働き方改革が提唱された背景や現在考えられている対策、企業ができる取り組みまで、働き方改革について紹介していきます。
働き方改革とは?
働き方改革は「一億総活躍社会の実現」に向けて考えられた取り組みです。多様な年齢やライフスタイル等に対応した働き方を実現するとともに、活躍できる層を拡大する考えのもと議論されています。まずは目的と、なぜその話が持ち上がったのかについて確認していきましょう。
一億総活躍社会と働き方改革
そもそも「一億総活躍社会」とは、「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の3つの実現を目指しています。そこで、少子高齢化や生産性の低下といった問題に取り組み、職場や家庭で誰もが活躍できる社会の実現を目標として掲げました。そのための取り組みとして、生産性の向上やワークライフバランスの改善が働き方改革として進められています。
働き方改革が求められる背景
働き方改革が掲げられた要因として、労働人口の減少があげられます。労働人口は、労働の意思と能力をもつ「働き手」となる人口です。これには就業者と失業者をあわせた数が該当しますが、1995年以降から減少し続けています。このまま減少し続ければ2013年に約8,000万人いた労働人口が2060年には約4,418万人になると言われています。この予想と現状から生産力・国力の低下は避けられないと考え、国政として働き方改革について議論が始まりました。
出典:国立社会保障・人口問題研究所
実現に向けた取り組みと課題
労働人口の減少にともない「1.働き手を増やす」、「2.出生率を上げる」、「3.労働生産性を上げる」といった3つの対策が考えられました。しかし、働く意欲はあっても働けていない層がいるといった問題と課題も持ち上がっています。
働き方改革の3つの課題
課題1.長時間労働の改善
日本の労働時間は非正規社員の比率が高くなったこともあり年々減少傾向にありますが、長時間の残業を行う企業もあり、2013年には国連から労働時間削減に必要な行政措置をとるように勧告されました。実際、「KAROUSHI(過労死)」という言葉が英語辞書に掲載されるほど、日本の労働時間の問題は国際的にみても問題視されています。
また、この問題は、出産・育児に適した年齢の人材に発生していることが多いとの話もあり、出生率にも大きく影響すると考えられています。
長時間労働に対する働き方改革
長時間労働の改善として、働き方改革では次のような取り組みが行われていくことになります。
・時間外労働の上限規制
・勤務間インターバル制度導入
・労働者の健康管理の強化
それぞれの項目は残業時間の軽減や睡眠時間の確保、医師による面接指導等で実現を目指します。また、月45時間以上の時間外労働は年6回までといった残業への制限が法的に定められるため、企業としても業務改善に取り組まなくてはいけません。
そのために、マニュアルやビジネスツールの見直し、有給取得の推進等を行っている企業も増えています。こうした取り組みによって、女性はもちろん、男性も育児や家事への協力ができる環境へと近づいていくことでしょう。
出典:厚生労働省-時間外労働の上限規制等について(建議)
課題2.非正規と正社員の格差是正
日本での非正規社員の待遇は、時給換算すると正社員の給与の6割ほどであると言われています。能力の高い人材でも、育児や介護といった事情から働く時間や場所に制約があるために非正規社員を選択するケースがあるようです。このような非正規社員にも、さらに活躍してもらうために、成果にあった待遇や個人に合わせた労働環境が求められています。
出典:「非正規雇用」の現状と課題
非正規と正社員に対する働き方改革
格差是正の改革としてあげられている「同一労働同一賃金」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。これは、勤務時間だけではなく、本人の能力や仕事ぶりを適切に評価することで非正規と正社員における格差の軽減を目指すものです。
長期的に働く人材は、業務のノウハウをもっているため生産性に期待が持てます。そして、非正規雇用者の正社員雇用等キャリアアップ促進のため、企業に助成金を提供する話も持ち上がっています。働き方改革では、非正規社員の賃金を正社員の約6割から欧米に近い額、約8割まで引き上げる目標を掲げました。非正規社員の待遇が改善できれば、事情により短時間しか働けないノウハウを持った社員も自社を離れることなく活躍できる可能性が出てくるかもしれません。
課題3.就労促進
国の調査では、定年を迎えた年齢である65歳以上になっても働きたいと考えている人が約6割いることがわかっています。現状、就労している高齢者は約2割いるため、「働く意欲はあるが働けていない層」への就労促進も考えられました。これは高齢者だけでなく、出産・育児を担う方や介護等で働き方に制限がかかる方にも関わる課題であると言えます。
出典:厚生労働白書
就労促進に対する働き方改革
働き方改革では、意欲のある人に柔軟な働き方ができるような環境整備が求められています。定年延長支援や雇用継続への働きかけだけでなく、高齢者の再就職に向けたマッチングネットワークの創設が提案されました。
また、一部の企業では、仕事と子育ての両立のため、テレワーク(在宅勤務)や業務効率を向上させるためのツール導入に取り組んでいます。例えば、SNSのように社内と社外でリアルタイムの情報共有ができるツールであれば、どこにいても報告・相談が可能になるでしょう。このツールが普及していけば、育児で子供から目を離すことができず会社に出勤できない方でも、自宅で業務に取り組むことが可能です。
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施行日はいつ?今からできる取り組みは?
実際に政府指導が始まるのはいつからか?どのように始めていくのか?これらの疑問に関してはまだまだ不透明な部分も多くあります。また、大企業と中小企業でも施行予定日に違いが見られます。今回、紹介している時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金の施行予定日は次のとおりです。
大企業 | 中小企業 | |
時間外労働の上限規制 | 2019年4月~ | 2020年4月~ |
同一労働同一賃金 | 2020年4月~ | 2021年4月~ |
出典:日本経済新聞
中小企業は約1年遅れての施行が予定されています。ただし、衆議院解散で討論が遅れるとさらに延期される可能性も考えられます。
企業が対応する働き方改革
施行まで期間があるからといって、まだ対応しなくて良いということにはなりません。長時間労働が常に行われている職場では、法整備が施行されたあとすぐに対応するのは不可能です。そのため、改善に向けた解決策は、ある程度時間をかけて推進していく必要があります。どのような対策ができるのか、考えていきましょう。
対応部署の設立・強化
働き方改革にスムーズに対応するためには、会社の規定や制度の見直しが必要になります。そのために必要な部署を設立するか、人事、総務といった管理を担当する部署の増員・強化を検討してはいかがでしょうか。今ある働き方を変えていくことは、容易ではありません。
企業によってはフレックスタイム制を導入し、勤務時間を1日ではなく1週間や1ケ月単位で管理しています。勤務時間のバリエーションを増やす時も、就業規則の見直しと一人ひとりの就業時間を把握できるシステムや人員が必要です。柔軟な働き方ができる環境整備に向けて、管理を担当する部署の現状も確認しておきましょう。
適切な勤怠管理
部署、チームを管理するリーダーは、まず社員の働き方を把握するところから始めてみましょう。例えば、確認する点として、勤怠の漏れがなく適切な管理ができているのか、残業が恒常的に行われていないかなどがあげられます。長時間労働が毎月のように行われている部署があれば、人材が適切に割り振られていないかもしれません。また、「業務フローは正しく機能しているか」「マニュアルが古くなり一人ひとりの認識に差がないか」等を見直すことで問題点が見つかる可能性があります。
部署の人数が多く管理が難しい場合、残業申請・管理に役立つツールの利用をおすすめします。運用方法は、翌週の残業予定を担当者が登録、その後に管理者が実績を登録して管理できるので、日々の残業予定と実績状況、残業理由がわかり負担が一部の社員に偏っていないかを確認することが可能です。また、視覚的に社員の残業状況も確認可能です。「どこに時間をかけているのか」「無駄な雑務がないか」を確認して、ひとつずつ改善を進めていきましょう。
ビジネスツールの導入・見直し
業務内容によっては、デュアルモニターの導入、マウスの変更だけでも業務効率の改善に繋がります。ほかにも業務改善に役立つビジネスツールは、多くの企業の助けになるでしょう。
例えば、紙ベースの議事録をペーパーレス化してみてはいかがでしょうか。議事録をタブレット端末でも閲覧できる形にしていれば、資料の整理、回覧にかかる時間は大幅に短縮できます。内容確認に必要な過去の議事録を探す場合もデータで検索できるので、手間を軽減できるでしょう。スケジュール管理も、PCとモバイル端末の両方で簡単に登録できる予定調整ができるツールがあれば、効率化できます。また、スケジュールだけでなく、会議室等の共有スペースの使用状況をすばやく確認できると、予定管理はさらにしやすくなります。
それ以外にも、顧客管理を一元化して情報を検索しやすくするツールや問い合わせ状況を管理できるツールが登場しています。普段の作業を今まで以上に効率的に進められる他、テレワーク等、多様な働き方の推進・改善にも効果を発揮するツールの導入・見直しも検討してみてください。こうしたビジネスツールの注意点として、モバイル端末で使用する際の外部の持ち出しリスクも考えて、権限の管理や、ツールの信頼性も見ておかなければなりません。ビジネスツールの導入には、使いやすさだけでなくセキュリティやサポート体制も確認しておくことが大切です。
今後の動きにも注目
正社員、非正規社員の格差をなくし、会社でも家庭でも活躍できる環境を整えるために働き方改革が進められています。施行まで期間はありますが、残業時間の削減や環境整備は短期間でできるものではありません。現状の勤務状況を把握して、人材を活かせる環境を整えていきましょう。
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