第3回 金融機関ユーザー
意見交換会開催レポート後編

ノーコードアプリ開発
の民主化は
現実的か?
担当者の本音

前編では、desknet’s NEO(デスクネッツ ネオ)の
導入背景やメリット・デメリットについて紹介した。
後編では、現在ノーコードツールとして注目を集めている
AppSuite(アップスイート)や、そのアクセス権限の設定などについて一部を紹介。
ノーコードだからといって、丸ごと現場に任せてもいいのか。
気を付けるべき点はあるのだろうか。気になる現場の今を垣間見ることができる。

AppSuiteで作成しているアプリと、
金融業界の「アプリの民主化」の今

AppSuiteで作成されているアプリの数や名称、役割などを教えていただけますか。

北陸銀行様AppSuiteで開発中のものが26、既に稼働中のものが30ほどあります。アプリの名称としては、DX案件管理表や変革プロジェクト案件管理表、スケジュール管理などです。DX案件管理表というアプリでは、新しい案件が登録されるとメールで通知が来る仕組みにしています。これまでのように案件の登録情報を自ら確認する手間がなくなり、便利になりました。変革プロジェクト案件管理表も同じような運用です。
今は営業店も巻き込んでAppSuiteを広めていこうという話があり、まず事務の習熟度をスキルマップという形で係の人たちに報告してもらっているところです。弊行でのAppSuite活用はまだまだこれから、という段階です。

ちなみに開発権限は現場の方々にも付与しているのでしょうか。

北陸銀行様“開発権限をどこまで持たせるのか?”ということについては少し悩んでいます。業務を知る現場の担当者がアプリを開発するという、アプリ開発の民主化自体は悪くありません。ですが一方で、開発権限を現場に全て渡して好きなように作られてしまうと、目が行き届かなくなることに対する恐怖があります。そのため、今はユーザーから要望がくると、システム部門がやりとりをしながら、アジャイル方式で作っています。
この運用をしているうちに見えてきたことがあります。それは必ずしもユーザーから要件がスムーズに出てくるわけではないということです。そうしたことから、現場に本当に任せても大丈夫なのか?という懐疑心が出てきました。一方で、現場に任せるようになれば、逆に要件についてもっと主体的に考えるようになるのでは?という期待と半々です。
ちなみにDXを推進している行員のなかには、一部、自分で手直ししたいという方々がいます。そういう人たちに対しては権限を付与して、項目追加などを行っていただいています。実は弊行では今、AppSuiteで開発をしているのはシステム部門の新卒行員です。エンドユーザーの話を直接聞いて形にするという、通常ではスキルや経験を積んでからしか経験できないような上流工程を体験できるいい機会になっています。もちろん、なかには要求レベルが高い内容のものもあるので、厳しい状況にも応えながら進めていくという観点からすれば、若手教育としてAppSuiteを活用するのは有効だと思い始めています。

宮崎銀行様当行で作成したアプリの数はまだ少ないのですが、これまで合計10のアプリを作成しました。現在稼働中のものは7つです。現在は現場からの依頼で2つのアプリを開発中です。ですので、近々9つのアプリが稼働することになりそうです。当行で開発権限を持っているのは、2~3人程度。desknet's NEO運用開始当初は、開発自体は基本的に私一人で行っていましたが、運用・保守を委託しなければならなかったので権限を他の人にも割り振っています。
ちなみに当行ではAppSuiteでアプリを作るときに機能等について部長級会議での協議も行っています。十分な協議を行う分、アプリの中身は充実しますが、各部担当者と会話する中で、構築に対するハードルが高いといったイメージをもたれていると感じています。もっとハードルを下げたくて、今はAppSuiteでの開発ルールを明確化してから、各部署に開発権限を割り振る。そのうえでリリースする前には一度、私たちに確認する流れに変えようと考えています。そうすることで、結果的にAppSuiteの活用が促進されるのではないかと考えています。
AppSuiteで作成するアプリとしては、データベースとして活用していることが多いですね。例えば、備品を注文するときに在庫管理&注文の計算をする。あとはExcelで管理していたもので検索しづらかったものをAppSuiteで作ったものに移行しようというケースが多いようです。

多摩信用金庫様当金庫ではアプリ作成と本番環境にアップするのは2名で、管理者に限定しています。その代わり、依頼はどんな内容でもOKにしています。早いものでは半日でリリースするものもあります。私どもはAppSuiteで開発するとき、タイトルの色や文字色などの基本的なルールは決めています。ですが、全てのものがそのルールに沿って作られているわけではありません。
AppSuiteの研修は実施したのですが、こちらで決めた細かいルールについてユーザーが読み込んでくれるわけではありません。残念ながら全然合っていないものも多いのですが、そこは割り切っています。チェックすべき項目、例えば、承認の経路やアクセス制限のようなところは事前にしっかりと確認しないと、閲覧したらいけない人に情報が見えてしまうリスクも。ですからアクセス権限については、私たちのほうでかなり手直しすることが多いというのが今の状況です。
私たちの確認を終えると、ユーザー側で手順書を作ってもらって、ワークフローのために手順書のリンクを貼るなど、運用上の問題はないか?を確認したうえで、本番稼働に持っていくような手順を踏んでいます。

山陰合同銀行様私どもの銀行では、IT中計の柱の一つとして「システム開発の民主化」、つまり業務所管部自らアプリ開発を行える体制整備に取り組んでいます。AppSuiteをその計画の中核となるツールと位置づけ、desknet's NEOを導入後まもなく、業務所管部に対する研修会や勉強会を企画して実施しました。2024年に入ってからは、「案件相談会」の仕組みを作り、我々AppSuiteチームが各部の開発を伴走支援していく体制を整えました。 具体的には、まずワークフローで起案書を提出してもらい、我々が承認した案件は、次に案件相談会を予約してもらいます。この案件相談会の中で、要望のヒアリングを行い、業務所管部で開発を進めることができる内容なのか、それとも私たちが開発を行ったほうが良さそうな内容なのか見極めることとしています。業務所管部で開発することとなった場合、開発権限を渡した上で、我々のフォローを受けながらアプリ作成してもらいますが、最後は必ず私たちのチェックを通すようにしています。
北陸銀行様の話にもありましたが、当行でも業務所管部に要件をヒアリングしても、うまく伝えてもらえないケースがあります。そこでヒアリングでは、現在の業務についてフロー図を作成してもらい、時系列で現行業務の流れを説明いただくようにしています。そのなかで不要と思われる事務が出てきた時は、「本当にこの事務は必要ですか?」と聞くと、「今までそんなことを考えたことがなかったが、確かに今考えると不要な事務かもしれない。」というような話になることも。そのような会話を何度も重ね、一緒に要件を固めていくようにしています。最近ではAppSuiteでできることのイメージが伝わり、日々数多くのアプリ開発要望が起案されてくるので、優先順位をつけて取り組んでいます。

工夫次第でメンテナンスの負担を軽減。
AppSuiteのアクセス権限の設定

AppSuiteのアクセス権限の設定は、どのようにしているのでしょうか。

多摩信用金庫様私どもではアプリについてアイコンを作っています。そしてdesknet’s NEO上ではアプリの使用者だけにアイコンを表示する形にしています。私は管理者なので、アプリのアイコンが山のように出ているのですが、ユーザー側にはアクセス権限のあるアプリのアイコンしか表示されないようにしています。使う人を限定することで、視覚的にわかりやすいような工夫をしています。

宮崎銀行様とはいえ、アクセス権限の管理は大変そうですね。

山陰合同銀行様個人単位で権限をつける形にされているのでしょうか。

多摩信用金庫様基本的に個人ごとにアクセス権を設定するのではなく、ロールに権限をひもづけています。というのも人事異動などで、担当者が異動した場合、個人にひもづけていると、また設定し直さなければならないからです。それに個人設定にすると、アクセス権限の設定漏れが発生してしまうリスクが高いじゃないですか。
ですから異動したら、ユーザーからロールの変更依頼をもらい、ロールのメンバーを入れ替え、極力、組織を使えるものは組織にひもづけるようにしています。

山陰合同銀行様ロールに権限を割り振り、ひもづけることができるのは便利ですね。

多摩信用金庫様AppSuiteにアクセスする入り口として、ポータルを「共通」と「サブシステム」という表題にしていて、サブシステムのところにAppSuiteで使えるアプリのアイコンがユーザー側に表示されるようになっています。

北陸銀行様弊行では、AppSuiteを使いこなしている人の場合、URLリンクをブラウザーの「お気に入り」に入れて使っています。最初、使い始めたころにはどこからAppSuiteにアクセスできるのか?と問い合わせが多くありました。でも「お気に入り」に入れてくださいと伝えたら、問い合わせはぐんと減りましたね。

宮崎銀行様当行では人事異動が年に5回程度あります。作業があるからといっても、人事情報が早めにいただけるわけではありません。任命制のものだけ手動でアクセス権限の設定を変更するようにしています。

ビジネスチャットChatLuck
(チャットラック)について

北陸銀行様私たちは行内のやりとりはdesknet's NEOを使用してもらい、行外とのやりとりはメールを使ってもらうようにして使い分けをしてもらっています。

宮崎銀行様ChatLuckについては自由に使ってもらっていますが、気がつくとどんどんルームが増えてしまいます。一度、内容を確認させていただき、使われていないチャットルームはどんどん削除するようにしています。

多摩信用金庫様私たちはまだChatLuckは検討中です。電子会議室や回覧・レポート、ダイレクトメッセージ等の基本機能である程度カバーできるため、一旦は導入を見送りました。皆様導入されていますので機能について再確認したいと思います。

山陰合同銀行様現在、行内のやりとりはメールが主流です。今後はChatLuckや回覧レポートをどんどん活用していきたい考えもありますが、まだなかなか浸透していないのが実情です。丁寧に使い方を周知するなどしていきたいと考えています。

皆さん、踏み込んだ運用の話にも触れていただきありがとうございました。desknet’s NEOは、国内有数の周辺機器メーカーと連携し、アルコールチェックアプリの開発など、時代のニーズに合わせた取り組みにも挑戦しています。これからもネオジャパンでは皆さまのご意見を参考にdesknet’s NEOとAppSuiteを進化させていきますので引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。本日はありがとうございました!